10年ごしの時間旅行(小説)

子どものころ両親の仕事の都合で転校を経験した少女の物語。「カテゴリー:プロローグ」からお読みください。

2023-01-01から1年間の記事一覧

150- いま、もしも願いが叶うのなら

もしも…もしも…もしも願いがひとつだけ叶うのなら… もう一度… もしも、もしもいま、願いがたった一つだけ叶うのなら、あの頃にひとときだけ時間を戻してほしい。 何かのまちがいが起こって、時空が歪んで、一瞬だけ、時間が戻ってほしい。 1日だけでいい。1…

149- 家族の楽しい時間を返して

夕暮れ時のオレンジ色の空と土草の匂いに、キャンプを思い出す。それだって、夏休みの何ヶ月も前から電話して、なかなか繋がらない中予約をとって。子どもたちの楽しみのために。 クリスマスのシーズン。鮮やかに彩られたクリスマスの飾り。知らない曲でも、…

148- だれか…

大人になって思うこと。あれから15年経って思うこと。 誰か…抱きしめてくれればよかったのに。 どんなに優しい笑顔も、どんなに勇気の出る言葉も、いらない。ただそっと、ただそっと抱きしめてくれる人がいればよかったのに。どうしてあの時、誰も助けてくれ…

147- 消えるトラウマ

あれだけ近くにいたのに、それが、1日にして、1日して全部消えてしまう。なくなってしまうのが、怖い。

146- 十数年経ってもそれでもまだ…

どうして私は、こんなにも引きずっているの?もう16年も経つのに、どうして?喉から手が出るほど触れたくても、もう戻らないんだ。 転校というよくある話で、なぜ自分はここまで敏感に繊細に感じ取って、深くトラウマになったのか?もっと鈍感だったら、世の…

145- 記憶

幼稚園の帰りに母と手を繋いで寄った公園も、父と母に手を握られ、真ん中でジャンプしていた歩道も、ふざけながら帰った通学路も、 この香り、どこかで感じたことがある気がする…その季節の香りがトリガーとなって、ふとした瞬間に、まるで昨日のことのよう…

144- 小さい頃から自分を知ってくれている人

転勤族の子どもである私には、幼い頃から自分を知ってくれている人がいない。 今は、祖父母と両親が、小さい頃から自分を知ってくれているけれど、時間が経つと、小さい頃の自分を知っている人が、この世界からいなくなっていく日が来るのだろう。そう、この…

143- 両親が心配

例えば、両親が還暦のお祝いをいつか迎えたとして、それを友だち家族と祝うなんて事もない。お祝い事も、自分たちだけで。大変なことがあっても、自分たちだけで。 この先両親がもっと年老いていった時に、どうするのか。地域に、近くに、頼れる人なんていな…

142- 共生

この感情とは、一生この気持ちを持ったまま生きていくんだと思う。 どれだけ居心地の良い環境にいて、どれだけ楽しくても、心を突き刺すような一種のさみしさのような感情は、消えない。

141- 辛いことがあった時に

本当に辛い時に、命の灯火が消えそうな時に、電車に飛び込んでしまいそうなほど辛い時に、涙でいっぱいの時に、ぎゅっとしてくれるような、温かい場所がないのだ。帰りたい。 どこに帰るの?

140- 本当は人が好きなの

本当はしたかったこと、いっぱいあった。親の還暦だって、友だち家族とにぎやかにお祝いしたかった。結婚式だって、幼なじみみんな呼びたいし呼ばれたい。本当は、本当は…近所の友だちの家に入り浸って、プライバシーもなんもなく、全部筒抜けでかっこいいと…

139- 絶対に手に入れられないもの

ある程度大きくなるまでずっと同じ場所に住んでいる人。幼馴染。家族ぐるみで付き合う人。小さい時から知ってくれている近所の人。 そのまままの自分を受け入れて、自分の長年の変化を知ってくれていて、とにかく、安心していられる場所、人たち。 私がどれ…

138- さみしいという感覚を取り戻した時に

さみしいという感覚を思い出した頃には、もう遅い。人と繋がっていたい。温かさに触れたい。でも、一人で生きた時間が長すぎて、どうしていいのかわからない。人肌が恋しい。キューっとなる。でも、これまでそんなに深い関係性になるのをずっと避けてきたか…

137- 時間差

大人になって、いろいろな出来事を経験して、ある出来事をきっかけに、不意に二度と開かないように蓋をしてたはずなのに、"ある日をかわきりに大好きな人たちに二度と会えなくなってしまった"トラウマを思い出してしまって、声をあげて泣いた。まるで子ども…

136- 私だって

そういう場所がほしかった。全部言葉にしなくても、説明しなくても、自分のことを理解してくれている人がいる。何も言わないけど、あたたかい眼差しを投げかけてくれている人がいる。そんな環境がほしかった。 新しい場所に行くたび、何も言わなくても、多少…

135- 言わないと伝わらない

言わなくてもわかってくれる、察してくれる、が、まったく通用しない世界を生きてきた。 自分の状態を、状況を、相手から見えていない部分を、全部言語化して、伝える必要があった。

134- 深く入っていけない

深く、入っていくのがしんどい。入られるのもしんどい。こうやって、深入りする前に、場所を変えてら転々と、ふらふらと一人で生きて行くんだろうな。 新しい環境にいくと、馴染まなきゃって、気を張って、疲れるけど、その負荷を自分にかけることが、デフォ…

133- 普通への憧れ

自分がどれだけ馴染もうとしても、よそ者だった。周りは小さい時からずっと一緒に過ごしている。これまで共有してきた時がちがう。みんなと同じにはなれない。 だから、普通になりたい、大多数と同じ側にいきたい、なぜなら、疎外感を感じたくないからーそん…

132- 最近見た夢

大人になってから見た夢で、最近見た夢で。 広い古民家のようなところにいて。床や柱は焦げ茶色。照明は少し落とし目で。 そこには、新しい家具があって。そろえられた家具とインテリア。きっと誰かのために、誰かを想ってそろえられた品々だ。 そんな期待は…

131- 一人になりたくない

もう一人になりたくない。もう一人で生きたくない。 お願い。 離れないで。いかないで。そばにいてお願い。

130- 今でも怖いの

ちがうの、ちがうの。もう失いたくないの。怖いの。 これ以上、深く入っていって、深く好きになってしまったら、失うことが怖い。深く知っていって、途中でうまくいかなくなって、だめになって、それで自分が傷つくのも怖い。 まだ、傷は癒えてない。本当は…

129- だれも

なくならないで…誰も…いなくならないで…お願い…

128- ずっとひとり

そうずっと。私はずっとひとりだ。これまでそうであったように、これからもずっと。 何十年経っても、きっとずっとひとりなんだ。

127- 新築の香り

新築の香りが苦手だ。思い出すから。あの日生きている世界が変わったことの衝撃と喪失感を。

126- 失った時間

失った時間は、あまりにも大きすぎた。だって14年だ。その代償は… 愛する人をたくさん傷つけてきてしまった。 もう、どこにも戻れない。もう、どこにも帰れない。

125- 私をこの世につなぎとめたもの

それは12年間愛された記憶だった。 子どものときに注がれた、お父さん、お母さん、弟、おばあちゃん、おじいちゃん、友だち、友だちのおばちゃんおじちゃん、習いごとの先生、近所の人、みんなから注いでもらったたくさんの愛が、それだけがいま、私をこの世…

124- ギリギリで生きている

死にたい。少しでも油断してしまうと、そっちに落ちてしまいそうになる。 社交的に見えていて、いつも笑顔で、明るくて。 こんなに日々ギリギリの淵に立って生きているなんて、この世の中の誰も知らないんだろうな。

123- 一人で生きるのをやめたい

もう、一人で生きるのはやめたい。でも、やめ方がわからない。なんてったって、13歳の頃からずっと一人で生きてきてしまっているのだから。誰かと生きる生き方のやり方がわからない。 頼れない。甘えられない。誰にも。だって頼ったら、それでややこしくなる…

122- 会いたい

なぜ…なぜなの?もう10年も経つのに。 わかってる、わかってる。みんなの過ごした時間に、自分はいないということ。 みんなと一緒に過ごしたかったな…楽しい時間を。どんな風になっていたんだろう… わかっているつもりだった。なのに、なぜ?こんなにも心が…

121- 深い傷

もう、ふつうには戻れないんだ。 傷が深すぎて。 もう。