10年ごしの時間旅行(小説)

子どものころ両親の仕事の都合で転校を経験した少女の物語。「カテゴリー:プロローグ」からお読みください。

大人になって〜前編

122- 会いたい

なぜ…なぜなの?もう10年も経つのに。 わかってる、わかってる。みんなの過ごした時間に、自分はいないということ。 みんなと一緒に過ごしたかったな…楽しい時間を。どんな風になっていたんだろう… わかっているつもりだった。なのに、なぜ?こんなにも心が…

121- 深い傷

もう、ふつうには戻れないんだ。 傷が深すぎて。 もう。

120- 長い付き合い方がわからない

人間関係を長く続けるやり方がわからない。リセット癖ではないけれど、ごちゃごちゃとなる前に、ある程度入ったら、新しい環境を求めて出ていってしまう。人として何か欠陥があるのではないだろうか。 小学校を卒業してから、長いこと同じ環境にいたことがな…

119- 一度出た場所には戻れない

大人になってからの話。 帰る場所がない私は、大切な思い出は綺麗なまま置いておかないと、心の拠りどころがなくなってしまう。 だから、一度出た場所には帰れない。 もし今いる場所を卒業し、新しい場所へ移った際、懐かしむ気持ちからそれまでいた場所に立…

118- いろんな世界を知っている人たち

海外で生活していたり、世界中を旅していたり、あちこち転々としていたり。いろんな価値観を知っていて、だからこそ “みんな同じ” という前提がないから、ひととのちがいに寛容で。自由で。そんな人たちと一緒にいると、心が躍った。 自分が絶対に手に入れら…

117- 放浪癖

愛する人が、離れて行ってしまうのが怖いの。だから、離れてしまう前に、自分から離れるの。だから、一つの場所にいられないの。転々としちゃうの。 一度出た場所に、帰りたくないのは、一度得た場所を、失いたくないから。

116- 強がり

全く新しい環境に飛び込んでみたり、いろんな世界を見たくて、新しい場所に挑戦している。ここ数年だと、2年おきに仕事の環境も、住環境も、360°環境が変わって。 すごいね、行動力があるね、突き詰められる力があるね、そう言われる。 そうじゃないんだ。本…

115- 長期的な関係

長期的な関係の築き方がわからない。短期間なら得意だ。新しいコミュニティを静かに見て、誰が安心か、味方になってくれそうな人は誰か、危険はありそうか、どの人と仲良くすれば人と繋げてもらえそうか、この人はどのような会話のペースなのか、この人はど…

114- 一人で頑張るクセ

一人で頑張ることをもう14年もしてきてしまったから。一人で頑張らないという方法がわからない。人を頼ったり甘えたりする度合いがわからない。やり方がわからない。 何かあっても、一人で解決しようとしてしまう。解決できてしまう、ようになってしまった。…

113- 人を好きになれない

どこか、一歩引いて、冷静に見てしまう。損得勘定で見てしまう。自分がこの環境で生き残っていくために、この人とは付き合っておいた方がいい、 そんなように。 何か得られるものがなければ付き合う気が起きないし、自分が提供できるものがなければ申し訳な…

112- どこへ行ってもよそ者

あの日から、どこに行っても疎外感を感じるようになっていた。高校を卒業してから、進学や就職を機に色んな場所に住み、色んなコミュニティに属してきた。 居心地の良い場所もあった。 でも、どこに行っても本当の自分の居場所ではないように感じてしまう。…

111- スキル

すでに出来上がった集団の中に、ポンと新しく入っていくこと。自然に馴染んでいくことに長けた。 その集団での力関係を瞬時に見分けて。この人は声をかけておいた方がいいな、この人はこういう会話のペースなんだな、この人はこういう言葉が好きなんだな。 …

110- 生きるか死ぬか

今、この環境で、うまくやれなくて、居場所がなくなったらどうしよう。今目の前にある環境にうまく溶け込めるかどうかに、生きるか死ぬかがかかっている。だって、うまくいかなかった時に、帰る場所がないから。目の前の場所で生きられないと、いる場所がな…

109- 評価され続ける人生

転々としていると、自分の次の居場所を獲得しなければならないから、自分を魅力的な人間だと周りに思わせて、選んでもらう必要がある。 すでにできている輪の中に入って受け入れられて生き残るためには、自分を選んでもらうことにメリットがあることを示さな…

108- 一人で生きていかなくては

誰も傷つけないために、そして自分も傷つかないために、一人で生きていけるようにならなくては。 困ったことがあっても、自分で調べて解決できるように知識をつけ、サービスに頼れるように収入を得て、武装した。周りに誰もいなくても、一人で生きていけるよ…