10年ごしの時間旅行(小説)

子どものころ両親の仕事の都合で転校を経験した少女の物語。「カテゴリー:プロローグ」からお読みください。

140- 本当は人が好きなの




本当はしたかったこと、いっぱいあった。

親の還暦だって、友だち家族とにぎやかにお祝いしたかった。
結婚式だって、幼なじみみんな呼びたいし呼ばれたい。

本当は、本当は…

近所の友だちの家に入り浸って、
プライバシーもなんもなく、全部筒抜けで
かっこいいところもかっこ悪いところも。
でもそれでよかった。それでよかったの。


怖いの。
自分はもう絶対そこには入れないの。
あの疎外感を感じるのが怖いの。
この世界に一人だけだって、もう思いたくないの。
もう同じ思いをするのは、二度とやなの。