10年ごしの時間旅行(小説)

子どものころ両親の仕事の都合で転校を経験した少女の物語。「カテゴリー:プロローグ」からお読みください。

145- 記憶


幼稚園の帰りに母と手を繋いで寄った公園も、
父と母に手を握られ、真ん中でジャンプしていた歩道も、
ふざけながら帰った通学路も、

この香り、どこかで感じたことがある気がする…
その季節の香りがトリガーとなって、ふとした瞬間に、
まるで昨日のことのように、鮮明に思い出す。

そして、
心が、心臓が、
なんとも言えない痛みに襲われる。