10年ごしの時間旅行(小説)

子どものころ両親の仕事の都合で転校を経験した少女の物語。「カテゴリー:プロローグ」からお読みください。

大人になって〜中編

132- 最近見た夢

大人になってから見た夢で、最近見た夢で。 広い古民家のようなところにいて。床や柱は焦げ茶色。照明は少し落とし目で。 そこには、新しい家具があって。そろえられた家具とインテリア。きっと誰かのために、誰かを想ってそろえられた品々だ。 そんな期待は…

131- 一人になりたくない

もう一人になりたくない。もう一人で生きたくない。 お願い。 離れないで。いかないで。そばにいてお願い。

130- 今でも怖いの

ちがうの、ちがうの。もう失いたくないの。怖いの。 これ以上、深く入っていって、深く好きになってしまったら、失うことが怖い。深く知っていって、途中でうまくいかなくなって、だめになって、それで自分が傷つくのも怖い。 まだ、傷は癒えてない。本当は…

129- だれも

なくならないで…誰も…いなくならないで…お願い…

128- ずっとひとり

そうずっと。私はずっとひとりだ。これまでそうであったように、これからもずっと。 何十年経っても、きっとずっとひとりなんだ。

127- 新築の香り

新築の香りが苦手だ。思い出すから。あの日生きている世界が変わったことの衝撃と喪失感を。

126- 失った時間

失った時間は、あまりにも大きすぎた。だって14年だ。その代償は… 愛する人をたくさん傷つけてきてしまった。 もう、どこにも戻れない。もう、どこにも帰れない。

125- 私をこの世につなぎとめたもの

それは12年間愛された記憶だった。 子どものときに注がれた、お父さん、お母さん、弟、おばあちゃん、おじいちゃん、友だち、友だちのおばちゃんおじちゃん、習いごとの先生、近所の人、みんなから注いでもらったたくさんの愛が、それだけがいま、私をこの世…

124- ギリギリで生きている

死にたい。少しでも油断してしまうと、そっちに落ちてしまいそうになる。 社交的に見えていて、いつも笑顔で、明るくて。 こんなに日々ギリギリの淵に立って生きているなんて、この世の中の誰も知らないんだろうな。

123- 一人で生きるのをやめたい

もう、一人で生きるのはやめたい。でも、やめ方がわからない。なんてったって、13歳の頃からずっと一人で生きてきてしまっているのだから。誰かと生きる生き方のやり方がわからない。 頼れない。甘えられない。誰にも。だって頼ったら、それでややこしくなる…