10年ごしの時間旅行(小説)

子どものころ両親の仕事の都合で転校を経験した少女の物語。「カテゴリー:プロローグ」からお読みください。

143- 両親が心配



例えば、両親が還暦のお祝いをいつか迎えたとして、
それを友だち家族と祝うなんて事もない。
お祝い事も、自分たちだけで。
大変なことがあっても、自分たちだけで。

この先両親がもっと年老いていった時に、どうするのか。
地域に、近くに、頼れる人なんていない。

あの街にいた頃は、あんなに友人家族がいて、母が寝込んでも、助けてくれる人がたくさんいたのに、
よくお母さん同士でごはんに行ったり出かけたりしてたのに、
そういうつながりが、一切ない。

そりゃそうだ。
子どもがうまくいかなかった場所を、大切な子どもを苦しめた場所を、好きになれるはずない。
両親から、交流の機会を奪ったのは私だ。