10年ごしの時間旅行(小説)

子どものころ両親の仕事の都合で転校を経験した少女の物語。「カテゴリー:プロローグ」からお読みください。

107- 消えないで


遠ざかってゆく。
消えないで。
記憶が消えたら、私は消えてしまう。

そんな昔のことを大切に抱えているのは私だけで、みんな忘れていくんだ。
私しか。

本当にあったと言って。
想像じゃないと言って。

なくならないで。お願い。