10年ごしの時間旅行(小説)

子どものころ両親の仕事の都合で転校を経験した少女の物語。「カテゴリー:プロローグ」からお読みください。

81- 泡のように


誰も悲しませることなく、ふわっと消えてしまえたらと思う。

いまこの瞬間、その場から消えてしまいたいと思う。

ふっ て、
泡のように、水蒸気のように。


だれにも迷惑をかけずに、いまこの場から消えられたら。

みんなの記憶の中から、私に関する記憶だけ消して、だれも悲しませずに、消してしまえたら。