10年ごしの時間旅行(小説)

子どものころ両親の仕事の都合で転校を経験した少女の物語。「カテゴリー:プロローグ」からお読みください。

33- 中学入学と同時の転校、初日


新しい中学校は、2つの小学校から構成されていた。
中学入学と同時の転入だと、「”新しい”転校生」だと紹介されることはない。
それがゆえに、転校生だと気づいてもらえない。
つまり、A小学校の人からはB小学校から来たと思われるし、
小学校Bの人からは小学校Aから来たと思われる。

中学生の時期特有の、みんな尖っていて警戒してる雰囲気だから、あまり声を掛けられることもない。

同じ小学校同士で完全にグループに分かれていて、ピリピリしている空気であった。
こんな他を受けつけない空気感を感じたのは、初めての経験だった。
グループに属さず一人でいる子は、さっそく「あの子小学校でいじめられてたから近づかない方がいいよ」という話が出回っていた。

行った先の学校は、どちらかと言うと田舎の学校で、流動性が低いそうだった。
新しい人や、自分とはちがう人を受け入れない閉鎖的な雰囲気を、子どもながらに感じとった。


これが新しい学校に行って初日に見た光景だ。
この世界で、明日から生きていかなくてはならない絶望が、わかるだろうか。