10年ごしの時間旅行(小説)

子どものころ両親の仕事の都合で転校を経験した少女の物語。「カテゴリー:プロローグ」からお読みください。

34- すでに出来ている輪の中に入っていく



新しい中学校のクラスは、まるで見えないバリアでも張られているかのように、グループできっかりと別れている。
中学入学と同時の転校だと、転校生だと気づいてもらえないため、誰からも声をかけてもらえることはない。
さいわい、声をかけてくれた人がいて、そのうち数人のグループに属するようになった。
居心地はあまり良くなかったが、ここは中学校。
どこかしらのグループに属していることが、クラスを、ひいてはこの新しい世界で生き残るための方法だということは、すぐに悟った。


地元の中学校に転校するのではなく、受験などをしてみんな人間関係ゼロからのスタートのところに入ればまた変わったのだろう。
すでに出来上がっていて、新しい人を歓迎しないコミュニティーの中に入っていくほど、大変なことはない。