10年ごしの時間旅行(小説)

子どものころ両親の仕事の都合で転校を経験した少女の物語。「カテゴリー:プロローグ」からお読みください。

98- 悪夢にうなされて3


ある日私は夢を見た。
小学校の校庭。広い校庭の真ん中、しゃがみこんで膝をついて、手から血が出るくらいにぎゅっと砂をにぎって、泣き叫んでいた。

「あーーーーーーーーーーー!!!!」

叫んで泣いていた。悔しいのか後悔なのか苦しみなのか。
何とも言えないあの気持ち。もう今となってはどうすることもできないあの思い。やり場のない思いを、地面に向かって、砂を両手でかき分けながら、泣き叫んだ。今までどうして、何をしてきたんだろう、そこには、もう取り返せない時間があって、あの時もしもみんなと同じように一緒に時間を過ごしていたら…あの時もしも本当のことをみんなに打ち明けてれたら…あの時もしも家族を傷つけずに済んだのなら…もう遅かった。取り返しはつかなかった。
いままで、どうして、何をしてきたんだろう。
もう取り返せない。
どうしようもない、もう戻れない。取り返せない。すぎてしまった時間を。