10年ごしの時間旅行(小説)

子どものころ両親の仕事の都合で転校を経験した少女の物語。「カテゴリー:プロローグ」からお読みください。

80- あれからの習慣


いつからだろう…
来るはずのないメールを待つようになった。

別に誰かを想定しているわけではない。特定の誰も想像していない。

小学校の時の友人からメールが届くとでも思っているのか、まさかそんな。
誰も私のメールアドレスなんて知らないから、そんなはずはないことはわかっている。
旧友からの連絡は期待していない。

じゃあ誰からのメールを待っているのか。

わからない。

でもなぜか、受信フォルダを確認してしまう。
誰から来るでもないメールを待ってしまう。