10年ごしの時間旅行(小説)

子どものころ両親の仕事の都合で転校を経験した少女の物語。「カテゴリー:プロローグ」からお読みください。

72- 自分を殺したい


大切なものを奪った自分を、この手で。


一度口に出した言葉は、もう消せない。壊したものは、もう戻せない。
もう取り返しがつかないところまできてしまっていた。
もう時間は、永遠に戻らない、一生。

最悪でした最低でした。
自分を殺したかった。
自分が、自分で、憎くて憎くて…しあわせな家族の笑顔を、生活を、奪った自分が憎くて…

ただ、自分を、この世で一番憎い自分を、自分の手でこの手で殺したい。
この世でいちばん大切なものを奪った自分を。 

死にたいんじゃない、殺してほしいんじゃない、自分を殺したい。