10年ごしの時間旅行(小説)

子どものころ両親の仕事の都合で転校を経験した少女の物語。「カテゴリー:プロローグ」からお読みください。

151- 探しもの


何かを、永遠に手につかめない何かを、ずっと探してるんだ。
求めてもいない。
ただずっと、探してるんだ。

ずっと探してる。
いつだって。

夕方に香る火の燃えるバーベキューの匂い
イルミネーションがたくさんの夜景
住宅街の昼下がりの香り
晴れた日、青空の下、大きな音楽が鳴り響いてるイベント
クリスマスの装飾
桜香る暖かい空気
ショッピングモールのごはん屋さん
軽やかなヨーロッパの音楽
雨の日に聞こえてくる音
夜露に湿った草の匂い

探してるんだ。
そのかけらを。

ずっと、ずっと、
見つかるはずのない何かを探してる。