10年ごしの時間旅行(小説)

子どものころ両親の仕事の都合で転校を経験した少女の物語。「カテゴリー:プロローグ」からお読みください。

28- 小学校の卒業式


桜はきれいだった。

春の訪れを告げる心地よい風に、桜は揺られていた。



もちろん、最後だなんて思っていない。
これからも普通に会えると思っている。
「また明日」
また明日が来ると思っている。



大人になって振り返ると、
これがみんなに会う最後の日となった。


ほんとうに、
人生で最後。
抱きついてくっついてちょっかいかけて、そうするほど近くで呼吸をして、大好きだった人たちも、
もう死ぬまで会うことはない。

大好きな場所だった。