10年ごしの時間旅行(小説)

子どものころ両親の仕事の都合で転校を経験した少女の物語。「カテゴリー:プロローグ」からお読みください。

74- ついに言葉を失う


高校に入ってからも、罪悪感にさいなまれる日々。
自分なんていなくなったらいい。
自分が憎い。
自分を殺したい。

声をかけてきてくれる人がいる。
こんなのと仲良くしない方がいい。
申し訳ない。
声をかけてもらうのが。
仲良くしてもらうなんて罪悪感だ。
私といても楽しいことなど起こらない。

そして相変わらずの人間不信。
中学の3年間で、完全に人を信じられなくなっていた。
この人間不信と罪悪感とに悩まされ続ける。

生きていてすみません。
本当にごめんなさい。


高1の秋ごろ、ついに私は言葉を失った。
話そうと思っても、言葉が頭に浮かんで来ない。文章がまとまらない。単語が切れ切れにしか出てこない…

小さい時から、頭の回転が速いと言われ続けてきた私が、何も出て来ない。
まるで脳の中のどこかがせき止められてしまっているかのように、言葉が出て来ない。

2人でいると、沈黙の間が流れる…
この言葉の出て来なさから、人との会話が成り立たなくなっていった。
3人なら頷くだけでもいられるので何とかしのげるけれど、2人になるのを避けた。

高1の秋、極度の人見知りになる。