10年ごしの時間旅行(小説)

子どものころ両親の仕事の都合で転校を経験した少女の物語。「カテゴリー:プロローグ」からお読みください。

86- 透明なバリア


それでも、透明な何かにバリアされ、できないのだ。
本心の私でいるということが。
昔はできていたはずなのに。
もう、もとの生まれた時のようにはなれないのか。

透明なバリアを人に作ってしまうことを、申し訳なく思う。
どれだけ仲良くなっても、どこかで何かに警戒している。

警戒していることがばれないように、
人が喜ぶように、場が盛り上がるように、気の利く一言が言えるように…
神経を使って、たくさん気を遣って。

でも自分がそうすればそうするほど、相手にも気を遣わせている。気づいている。

それでも、バリアを外すことが出来ない。