10年ごしの時間旅行(小説)

子どものころ両親の仕事の都合で転校を経験した少女の物語。「カテゴリー:プロローグ」からお読みください。

【4】転勤による転校、帰る場所がない

親の仕事の都合で、中学入学と同時に転校した。

 

幼稚園から小学校へ上がる時、小学校から中学校へ上がる時、中学校から高校へ上がる時、と、人脈が引き継がれていく。

自分をもともと知っていて受け入れてくれる人がいるから、新しい人間関係にチャレンジできるんだ。
新しい環境でうまくいかなかったとしても、戻ることのできる場所があるから、新しい場所へ出ていけるんだ。

でもそんな場所のない自分にとっては、今目の前にある環境にうまく溶け込めるかどうかに、生きるか死ぬかがかかっている。
だって、うまくいかなかった時に、帰る場所がないから。
目の前の場所で生きられないと、居場所がなくなってしまうから。
だから、大人になってもなんとなくずっと不安定で。

その人の前で泣けるくらい腹を割って話せる友人に、大学で出会っても、
その友人には小・中・高と一緒に歩んできて、喜怒哀楽を表せる地元の友人がいるんだろうなと。でも自分は一人なんだなと。

 

どこまでいっても自分は一人なんだと、底なしの孤独を感じる。