10年ごしの時間旅行(小説)

子どものころ両親の仕事の都合で転校を経験した少女の物語。「カテゴリー:プロローグ」からお読みください。

118- いろんな世界を知っている人たち


海外で生活していたり、世界中を旅していたり、あちこち転々としていたり。いろんな価値観を知っていて、だからこそ “みんな同じ” という前提がないから、ひととのちがいに寛容で。自由で。そんな人たちと一緒にいると、心が躍った。


自分が絶対に手に入れられないものを持っている人たち。
帰る場所があって、小さい時から知ってくれている人がいて、無条件に受け入れられる場所があって。

それに比べて、あちこちを転々とするのはエネルギーがいる。
今いる安全な場所を抜けて、外の世界へ飛び出して。
うまくいくかどうかもわからない、
味方になってくれる人がいるかどうかもわからない、
そんな世界にたった一人で飛び出していく。

そういう挑戦している人たちとばかり付き合ってる。
安心できる環境でのんびりと暮らすことだってできるのかもしれないけれど、安心の環境に身を置かず、頑張っているのは、戦っているのは自分だけじゃないって、そこから励みを得たくて。



いや、ほんとはちがう。
ほんとは…本当は…
安心するんだ。

“ひとつの場所がない”のは私だけじゃないって。

それに、みんながちがえば、
みんなと同じでなきゃって不安になることがないから、
だから、そういう環境が居心地が良く感じて、そういうコミュニティに行きたがる。

それでも、さみしさは消えないのに。