10年ごしの時間旅行(小説)

子どものころ両親の仕事の都合で転校を経験した少女の物語。「カテゴリー:プロローグ」からお読みください。

60- 生き地獄


学校にいる間の、時間が長くて長くて、
1週間を乗り越えるだけでも一苦労で、
ずっとカレンダーを見ていた。
時間割を見ていた。
時計を見ていた。
1秒が、とてつもなく長く感じる。


年間カレンダーを毎日確認した。
あと1ヶ月で、一学期の半分が終わる。半分までやれたんだ。あともう半分もきっといける。大丈夫。
あと2ヶ月耐えれば、夏休みが来る。そう、夏休みまで行けば安泰だ。とにかく夏休みまで耐えしのぐんだ。

何度も何度もカレンダーを確認する。
先が見えない。一年の終わりはほど遠い。
カレンダーをめくるように、時間がサッと過ぎたことになればいいのに。
指に力がこもる。お願いだから、知らない間に時間が過ぎててくれ…

あと1ヶ月で、夏から秋に季節が変わる。そうしたら、1年のうちの半分、折り返し地点だ。長い…長いよ…
あと1ヶ月で冬休みがやってくる。この1ヶ月、この1ヶ月が勝負なんだ。この1ヶ月を乗り切れば、あとはこの学年でいるのは3ヶ月間だけだ。いや春休みもあるから実質3ヶ月もない。だからもう少し、もう少しだけ耐えてくれ…お願い…
あと2ヶ月、あと2ヶ月で一年は終わりだ。ここまで来たんだ、あと少しなんだ…もう命が枯れてしまいそう…あと少しなんだ…


 
ウィークリーカレンダーとにらめっこした。穴が開くほど見つめた。
憂鬱な月曜日。休みだった日から平日に切り替わるから、高低差があるだけにそのエネルギーがしんどい。
火曜日。1日はもう終わった、1週間のうち1日はもう終わったんだ。今日を乗り切れば、明日は1週間のうちの半分に当たる日だ。
水曜日。半分まで来た。1週間の半分まで頑張ったんだ。もう峠は越えたんだ…まだ半分か。1週間長いよ…
木曜日。もう明日1日行けば金曜日だから。土曜日が来るから。もうここまで来たんだ。頑張れ。あとちょっと。あと1日だけ耐え抜いて…お願い…
金曜日。あと1日。あと1日。今日を乗り切ればまた1週間終わるから…


時間割を一日の中で何度も確認した。
とりあえず1時間目を乗り越えた。あとはこのままじっとしていれば時間は流れるから…じっとしておけば時は進むから…
2時間目が終われば、午前中の半分が終わる。もう少しで半分が終わるから…
3時間目が終われば、あと1時間乗り切れば一日の半分までくるから…
4時間目が終われば、もう午前中は終わりだから、あとはただじっとしていれば午後も終わるから…もう峠は越えたから…
5時間目が終われば、もうあとは6時間目だけだから…もう一日の終わりは目の前だから…
6時間目が終われば、もうここから出られるんだ。あともう少しなんだ…


こんなことを、毎日毎秒考えていた。
1秒が100000000000秒にも感じられた。