10年ごしの時間旅行(小説)

子どものころ両親の仕事の都合で転校を経験した少女の物語。「カテゴリー:プロローグ」からお読みください。

45- 帰り道の裏切り


毎日、家が近いAとBと3人で一緒に帰っていた。
Aは家が近く、親同士の交流もあった。
Bは会話のペースが合い、何かと話が盛り上がることも多いと思っていた。
ある日の帰り道、もうすぐ互いの家に着くという時だった。
「あなたはそこでちょっと待ってて」
Aが、何やらBに話があるとのことで、私とBを離し、AとBがコンクリートの影に隠れて、私は1人で待たされることになった。
ひそひそとしゃがんでAがBに話を持ちかけていた。
小声で話しているとはいえ、こちらにも聞こえてくる。

Aが私のことをよく思っていないことが話されていた。
Bは否定はせず、「そうだよねぇ」と返していた。


初めての体験だった。
それまで一緒にいた人に、裏切られるといのはー

それだけならまだよかったんだ。
その後、Aが私の家族のことをよく思っていないこと、Aの親が私の親のことをよく思っていないことなどが話された。
Bも肯定的だった。

心臓に穴が空いた気分だった。

いまだにあの時の心臓が冷やっとした感じはなんとなく覚えていた。
これまでどれだけ温かい人たちのもとで守られていたのか、痛いほどよくわかった。